- 公開:1986年
- 監督:ロブ・ライナー
- 出演:ウィル・ウィートン/リヴァー・フェニックス/コリー・フェルドマン/ジェリー・オコンネル/キーファー・サザーランド
- 舞台は1950年代末のアメリカ、第二次世界大戦も終了し、いわゆる”50’s(フィフティーズ)”1)戦争も終わり、一部では”アイゼンハワーの昼寝”と呼ばれている、今日私たちが慣れ親しんでいるアメリカンカルチャー全盛期ともいわれる時代。一般的にフィフティーズというと、1955~1965年前後のことを指す。といわれる時代のお話。
- 当時のブルーカラー的な少年たちの田舎でのひと夏の冒険をシリアスかつ子供目線ながらのウィットに富んだ演出で描き出した傑作。
- スティーブンキング短編集、「恐怖の四季」に収められた一遍”THE BODY(死体)”が原作とされている。
さて、前回からだいぶ間が空いてしまいましたが、引き続き映画”Stand by Me(スタンドバイミー)”についてお送りいたします。
本稿では、テディ以外の登場人物に関してフィーチャーされているファッションについて取り上げます。
contents
アメリカ不良少年像のオリジンにして完成形”Chris・Chambers(クリス・チェンバー)”
本作品の主人公格、クリス・チェンバー(画像左)。
クタクタの白い無地Tシャツに色落ちの履き古したブルージーンズ、コンバースライクなコート系スニーカーを合わせる、これ以上シンプルに出来ないとでも言えよう王道のアメカジスタイルをモノにしています。
今やったら、ダサい(?)し、ちょっと後ろめたい Tシャツの袖にタバコをイン!
冒頭より、リヴァー・フェニックス演じるクリス。
一応言っておきますが、彼も12歳の設定です。
白いTシャツの袖をロールアップして、タバコを巻き込むようにしてはさむスタイルをしてます。
21世紀の私からしたら、
「どんだけおしゃれ上級者やねん・・・。」
と、ため息がこぼれんばかりです。
正直に申し上げて、こうした格好は賛否両論だと思います。
タバコそのものの市民権、あるいはその社会的地位については言わずもがな、現代においては50年代のそれとはわけが違います。
現代日本においてもこうした世相については、喫煙者の方もそうでない方も、よくご存知のことと思います。
実は、こうしたタバコを袖に巻き込んで持ち歩くスタイルは、何もクリスだけのおしゃれテクニックではなく、5~60年代を舞台とした映画ではしばしば見受けられます。
当時のブルーカラーや不良のスタイルとして一般的だったのだろうと考えられます。
ちなみに、また別の機会に題材として扱う、
“American Graffiiti(アメリカングラフィティ)”
においても同様の描写があります。
スタンドバイミーは1986年公開ですが、時代背景はこのアメリカングラフィティと同じ1950年代。
やはり当時の若者、不良たちの一種のスタイルであったのでしょう。
兄を慕う優等生キャラ”Gordie Lachance(ゴーディ・ラチャンス)”
本作品では主演の位置づけとなっている、ゴーディ。
不良少年グループの一員でありながら、他界したフットボールの名選手の兄と、教育熱心で教科書通りなアメリカらしい両親を家族に持つ、スティーブン・キング作品に登場しがちな少年です。
無地Tやシャツよりもしなやかさが演出される淡色のボーダーTシャツに、New York Yankees(ニューヨークヤンキース)のキャップを合わせているところが、他の少年とは少し違うおとなしさと内に秘める熱さを醸し出しています。
伝統あるアメリカンベースボールキャップを買うなら
さて、そんなゴーディ少年が序盤のシーンで被っているのは、他界してしまった兄からプレゼントされたNew York Yankees(ニューヨークヤンキース)のキャップ。
今でこそ多様なベースボールキャップが発売されており、ストリートにおいてはNEW ERA(ニューエラ)の市民権は絶大なものを誇っていますが、こうしたクラシックな形のベースボールキャップであれば、どちらかというとご紹介したいのが、こちら。
EBBETS FIELD FLANNELS(エベッツフィールドフランネルズ)
設立自体は1987年のワシントンと、比較的歴史は浅いですが、伝統的な製法とMade In USAを貫き続けている、クラフトマンシップ溢れるメーカーです。
1940年代当時のベースボールシャツなど、シャツのボディが完成したのち、手作業で一つ一つフェルト地のワッペンを取り付けていくというスタイルを貫いておりますし、またヴィンテージウェアへの造詣も深く、当時の生地感の再現などにも意欲的に取り組んでおり、サテンジャケットなど、ベースボール以外の分野にも注力し、評価されています。
不良の敵はやっぱり不良、地元の悪い先輩ファッション
作品の題材となる死体探し、これについて主人公たちとどちらが先に見つけるかを争っているのが、クリスの兄も属する不良グループ。
自分たちでチームのタトゥーを彫り合うなど、なかなかにキマってます。
シャツやTシャツをリーバイスにイン!
主人公たちとは敵対(?)する、1世代上の不良たちの会話の場面においては、10代後半の不良少年たちのいかにもアメリカらしい着こなしを探ることが出来ます。
写真左手:開襟シャツをWRANGLER(ラングラー)にインして、髪型はダックテイル2)エルビス・プレスリーよろしく、いわゆる”リーゼント”のような髪型。その名の通りアヒルの尾のような見た目がその由来。気味のセット。
写真右手:グレーのTシャツの袖をロールアップしてこちらもデニムにイン。
最近でこそ、レトロブームなどを皮切りに、タックインスタイル3)トップスをパンツにインするスタイルが流行しておりますが、カジュアルファッションにおけるこうしたタックインスタイルは、おそらくこの時代の着こなしが原流であると考えられます。
アメリカのこうした不良少年たちの着こなしは、だらしなく映らないところが肝ですね。
ぴっちりと決まった髪型にタックイン、尚且つ姿勢もスマートだったりします。
ジェンダーフリーなこのご時世に適切な言い回しか迷いますが、男らしさというか、独特の美学というか、そういったセンスが感じられて非常にカッコいいと思えてしまいます。
ちなみに、ダックテイル的ヘアスタイルを目指すなら、
こちらの記事にスタイリング剤のオススメを記載しております。
よろしければどうぞ。
アメリカを代表するスニーカーといえば
1950年代の少年たちが登場する映画ということで、当時のローテクスニーカーは当然フィーチャーされています。
作中で明確に描写があるのは、”the Body(死体)”を演じてくれたブラワー少年が身に着けていたKeds(ケッズ)くらいですが、目を凝らしてみるといろいろ見つかります。
CONVERSE
1908年の創業以来、全世界において幅広く支持を得ている一大スニーカーブランドですね。
この名前を聞いたことがない方はおそらくいらっしゃらないのではないでしょうか。
元々は、降雪量や湿度の高いマサチューセッツ州の地域性に着目し、雨天でも作業ができるように開発されたラバーシューズのメーカーでしたが、品質が評価され、名バスケットボールプレイヤーのチャールズ・H・テイラーや、バドミントンのジャック・パーセルなどの愛用を皮切りに、その知名度を高めていきました。
この写真において、クリスやゴーディが履いているスニーカーは、明確な描写もなく、また細かなデザイン上ではコンバースとはとらえづらい形状ですが、オールスターにはよく似ていますね。
昔のミリタリートレーナーやレインシューズなどを元にした、いわゆる今でいう量販店的なところで売られていた普遍的なデザインのスニーカーとでもいいましょうか。
それもそのはず、この年頃の田舎の貧困層の少年がコンバースを履いていたら、ちょっとリアルじゃないかもと思ってしまいます。
Keds
クライマックスでブラワー少年が履いていたのはKedsのスニーカー
セリフではきちんと描写されているのですが、映像で見ると非常にわかりづらい・・・。
画像左下の木の上に乗っかているのが、それです。
本作品のストーリーテラーである大人になったゴーディが、当時の少年時代を思い出して、”わざわざ”「Keds(ケッズ)のスニーカーを履いていた」と描写する点、当時なかなか買ってもらえなかった人気スニーカーであったKedsに対する憧憬も含まれているのではないかなぁと思案を巡らせてしまいます。
ま、実際どうかはわかりませんが、そうやって映画の時代を読み解いてみるというのもなかなか面白いですね、というお話です。
ではまた。
References
1. | ↑ | 戦争も終わり、一部では”アイゼンハワーの昼寝”と呼ばれている、今日私たちが慣れ親しんでいるアメリカンカルチャー全盛期ともいわれる時代。一般的にフィフティーズというと、1955~1965年前後のことを指す。 |
2. | ↑ | エルビス・プレスリーよろしく、いわゆる”リーゼント”のような髪型。その名の通りアヒルの尾のような見た目がその由来。 |
3. | ↑ | トップスをパンツにインするスタイル |