Warriorsに見る、1970年代ニューヨークのストリートギャングカルチャー Part1

久しぶりの更新となってしまいました。

今回の題材は、

“Warriors(ウォリアーズ)”

  • 公開:1979年
  • 監督:Walter Hill(ウォルター・ヒル)
  • 1970年代の末期のニューヨークのストリートギャングの抗争を描いた作品。一部映画ファンからカルト的な人気を誇る。当時のストリートファッション・カルチャーの多様性を読み解くことが出来るが、当時としてはあまりに過激な描写やバイオレンスが含まれていたため、負の社会現象を生んだ問題作としても知られている。

 

こちらの作品は、1970年代の混沌としたニューヨークストリートを舞台として、個性的なギャングたちを描いている点で、ファッションを読み解くのが非常に面白いです。

今回はせっかくなので、作中に登場するギャングごとにそのスタイルをご紹介したいと思います。

 

アメリカン・カンフースタイル ”Riffs(リフス)”


最初にご紹介するのは、作中でも最大のギャングとして描かれているRiffs(リフス)。

構成メンバーは全員黒人で、70年代当時人気を博していたアクション映画、ことカンフースタイルの着こなしが見事です。

中国文化をストリート風にミックスしてしまうこのセンスはさすが、アメリカらしいです。

シルクのような光沢のある生地感に、オリエンタルな柄、ローブ的なデザインがリフスのリーダーであるサイラスの立場を象徴的に演出しています。

 

前列にいるのは小隊長的な構成メンバーでしょうか。その後ろの構成員は全員少林寺を彷彿とさせる統一的なカンフーシャツを着ていますね。

 

アメリカにおける華僑排斥の歴史


アメリカでの中華文化の歴史については、かなり複雑ではありますが、簡単に要約すると、

  • 1882年、排華法1)第21代大統領チェスター・A・アーサーによる施行
  • 1888年、スコット法により中国人のアメリカ再入国も禁止
  • 1892年、ゲイリー法1902年「中国人入国制限法」の10年延期措置
  • 1943年、ルーズベルト大統領により排華法撤廃

と実に60年余りの間、アメリカ国内では中国人排斥の文化があったといえます。

こうした中国人排斥の発端となった排華法は、

アメリカ連邦政府が,特定のグループの特定の社会階層を合法的に国から排除する,史上初の人種差別法を成立させた瞬間

引用元:東南アジア研究 43巻4号 2006年3月 北アメリカの華僑・華人研究 ――アジア系の歴史の創出とその模索――園 田 節 子

という言及の通り、歴史的にみても大きな出来事でした。

ただ、西部開拓や南北戦争、奴隷制度等を鑑みるに、アメリカには人種差別に類似する歴史は色濃く残っています。

そうした歴史のあとでの1970年代、過去排華法下にあったアメリカ合衆国では現地の中国人コミュニティを統括する「中華総会館」と言った団体などの存在がチャイナタウンを形成する大きな役割を担っていたという背景、排斥され続けてきた背景を鑑みると、この”Warriors”においては、「ストリートギャング、アウトロー」を抽出するのにある種適したファッション感覚でカンフーシャツが描かれているように思えます。

 

ちなみに先述の排華法を施行したアーサー大統領の髭について言及しておくと、

「アーサー大統領」の画像検索結果

口髭と頰髭を蓄え、アゴ髭を剃り落としたスタイルが印象的です。

こうしたスタイルは、Friendly Mutton Chops(フレンドリーマトンチョップス)と呼ばれ、口髭がないMutton Chops(マトンチョップス)の派生系です。

 

カンフー、チャイナスタイルをミックスするなら


カンフー、チャイナスタイルは昨今のファッションのトレンドでもあったので、こうした着こなしをするのに適したブランドは今では結構あります。

ここでは、個人的にオススメな2ブランドのご紹介です。

Needles

「needles ブランド」の画像検索結果

Needles・・・Engineered Garmentsなどを展開するセレクトショップ”Nepenthes(ネペンテス)”の創立者、清水慶三氏がデザインを手掛ける日本のメンズブランドです。独特のミックス感覚から生まれるテキスタイル2)一般的には布などの織物のことで、それらを加工して商品化されたものを指すファブリックと区別されて使われるやパターンが特徴的で、ヴィンテージにも深い造詣を感じるデザイン性から、古着を好むようなファン層も獲得しています。

Corefighter.co

Corefighter・・・L.A在住の田中ノボル氏が97年にLAでスタートさせたブランドです。 西海岸の空気を東京のストリートに確実に伝える希有なブランドで、西海岸テイストのアメカジスタイルが基本となり、日本のストリートカルチャーにおいても重要な役割を担っています。

 

レザーベスト×スカルのバイカースタイル Warriors(ウォリアーズ)/Rogues(ローグス)


こちらでは作中のバイカースタイルに特化したチームのファッションについて言及します。

 

Warriors(ウォリアーズ)


さて、作中の主人公たちが属するチームWarriors(ウォリアーズ)の登場です。

彼らはスカルモチーフとサイドウィングモチーフが施されたレザーベストを腕モロ出しで着用するというなんとも男前な着こなしを見せてくれます。今となっては結構勇気のいる(?)スタイルですね。

ただ、この刺繍、ローカルなストリートギャングが身に着けるにしてはいささか手が凝りまくっているなーと感心してしまいます。めちゃくちゃ綺麗に処理してあります。

良い仕事してますねー。

 

Rogues(ローグス)


続いては作中でウォリアーズを陥れたチーム”Rogues(ローグス)”。

レザーのベストという点ではウォリアーズと共通していますが、背中のモチーフはワッペンで縫い付けられていたりと仕様が異なります。

また、メンバーが被っている帽子もレザーのポリスキャップである点や、リーダー格の男の左胸にはポリスバッジが付けられている点、国家権力に対するアンチテーゼ(あるいは作中で描かれていないが、倒した警官から奪った的な裏設定があるのか)を主張したチームであるように思えます。

 

Warriors/Roguesのような退廃的バイカーファッションをするなら


こうした2つのチームに共通するのはやはり”武骨”、”男らしい”、流行りの言い方をするのであれば”非モテ”でしょうか笑

 

いずれにせよ自分たちの反骨精神やスタイルを表現するために筋を通した着こなしをしているのはカッコイイと思います。

ここではそんな彼らのような武骨なバイカースタイルをするのに個人的オススメブランドをご紹介します。

VANSON

1974年、マサチューセッツ州ボストンにおいて創業されたアメリカを代表する世界的レザーウェアブランドです。

ハンドメイドと質実剛健な作りがファッショニスタおよびバイカーからの絶大な人気を誇り、現在の日本でも多くのセレクトショップにおいて取扱われたり、古着市場でも人気が高いです。

その製作工程は多岐に渡り、最もシンプルなジャケットの工程でさえ49工程、複雑なものになると100以上の工程を経て商品化されるというから驚きです。

 

Harley DavidsonPAM

ハーレーダビッドソンの歴史の画像

1903年にウィスコンシン州ミルウォーキーでの創業以降、キングオブモーターサイクルとして世界に知れ渡るバイクメーカーです。古着屋さんでプリントTシャツやレザージャケットを目にしたことがある方も少なくないのではないでしょうか。

ちなみにミルウォーキーといえば、こちらの

1930年を舞台にした”STING”に見る、クラシックアメリカンスタイル Part2

でも触れた”Schlitz(シュリッツ)”というビール と同じ拠点ですね。

どちらの企業も2度の世界大戦を含む激動の20世紀を生き抜いた企業ですが、かたやシュリッツは凋落、かたやハーレーは現在でも世界のトップ。業種は当然違えど不思議なものです。

 

Langritz Leathers

「langlitz leathers」の画像検索結果

1947年ロス・ラングリッツによって創業。

第二次世界大戦中に軍用グローブ工場で祭壇と縫製技術を学んだのち、自身や近親者向けにモーターサイクルウェアの製作をはじめました。

代名詞的なモデルには、

Columbia(コロンビア)

columbia_front

やCascade(キャスケード)

cascade_front

が知られています。

ポートランドにおいて1960年代から変わらぬ工場で今もなおこだわり抜かれたプロダクトが生み出し続けられております。

何より驚きなのが、世界的に有名なモーターサイクルウェアブランドとなった今でも、1日6着までという極少量生産を続け、そのこだわりと重厚感、佇まいをしっかりと継承している点です。

そうしたこだわりの強いモノづくりの姿勢はモーターサイクル業界のみならず、アパレル業界においても非常に評価が高いです。

 

blackmeans

2008年秋冬シーズンより、レザーブランド「ブラックミーンズ(blackmeans)」として活動を開始。
ブランドのルーツでもあるJapanese Hardcore Punkの視点から、
既成概念にとらわれることのないファッションやスタイルを創造・提案していくことをコンセプトとし、
自分たちの中に存在するパンク、モーターサイクル、民族、ハードコア、モードといったあらゆる要素を単に統合させるだけでなく、
日本人が持つ独自性、パンクやハードコアに由来する攻撃性、今を生きる人としての前衛性を意識した物づくりを追求していく。

ブランドサイトより引用

上記の3ブランドとは異なり、モーターサイクルに特化したブランドでこそないですが、そういったカルチャーや音楽カルチャーに日本人のもつ独自性を際限なく取り入れた稀有なブランドです。

手作業による生産にこだわり作られたプロダクトはどれひとつ同じものはありません。スタッズが最も特徴的ではありますが、まさにありとあらゆるカルチャーを自分達流に解釈し最大限ブラッシュアップする日本ならではの素晴らしいブランドです。ある種2000年代の今だからこそ実現できるカルチャーミクソロジーだと思います。

 

 

 

さて、今回は久しぶりの更新ということで少し長めになってしまいましたが、今回はこの辺で。

Part2では僕が全映画中最も好きなギャングチーム”Baseball Furies(ベースボールフューリーズ)”にも触れて参りたいと思います。

やっと書ける。

 

ではまた。

 

参考文献


東南アジア研究 43巻4号 2006年3月

北アメリカの華僑・華人研究 ――アジア系の歴史の創出とその模索――

園 田 節 子*

References   [ + ]

1. 第21代大統領チェスター・A・アーサーによる
2. 一般的には布などの織物のことで、それらを加工して商品化されたものを指すファブリックと区別されて使われる

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